dev-agent-teamシリーズの10本目。 前回(キットが自分の矛盾を見つける)で、 掃除の実装を「下位ティア・低effortのエージェント」に任せた、と書いた。 今回はその層別配分——モデルとeffortを段で分ける設計——を型にした話。
- 司令塔(判断層)はセッションモデルを high〜xhigh、実装層は下位ティア・effort:low
- 核原則「AIは判断材料、判断は人間」を、エージェント階層に適用した相似形
- コストを削るのは実装層だけ。司令塔と検証層は削らないという非対称性
マルチエージェントで動かすと、素朴には「全部を同じ強いモデル・強いeffortで回す」となる。 だがそれは高コストなうえ、設計としても雑だ。 今回の改善(PR #25)は、 層ごとにモデルとeffortを配り分ける型をキットに据えた記録だ。
原則は一行で言える。
判断は上流(司令塔)に集約し、実装層から判断を排除する。
1. 核原則の相似形——判断が下るほど減る
このキットの核原則はずっと「AIは判断材料、判断は人間」だった。 今回の層別配分は、それをエージェントの階層にそのまま写した相似形だ。 上流から下流へ、判断の量が段階的に減っていく。
最終判断
判断あり
判断なし
人間 → 司令塔AI → 実装AI の順に、判断の余地が減っていく。 実装AIには判断させない——だから安いモデル・低effortで足りる。 逆に、判断が集まる司令塔と、それを敵対的に潰す検証層は、けっして削らない。
2. 配分表
docs/native-tooling-integration.md に新設した配分は次のとおり。
層 役割 model effort
────────────────────────────────────────────────────────────────
司令塔 分解・判断・指示生成・集約 省略=セッション継承 high〜xhigh
実装 精密指示の機械的適用 省略 or 下位ティア low
(Sonnet 5 は medium)
検証 敵対的 verify 省略 high〜xhigh 司令塔と検証は「省略=セッションモデル継承」。 つまり、いまClaude Codeで使っているモデルをそのまま司令塔に据える。 下げるのは実装層のeffortだけ、というのが要点だ。
3. effort:low の実装が成立する5条件
実装層を effort:low に落とせるのは無条件ではない。
「判断させない」を成立させるための条件を5つ明文化した。
- 自己完結した指示 — 実装AIが外部文脈を推し量らなくていい
- 判断余地ゼロ — 「どちらにするか」を実装層に残さない
- 機械的検証の同梱 — 成否を機械が判定できる形で渡す
- 報告義務 — やったこと・対象外の変更を必ず申告させる
- 司令塔の差分レビュー — 上がってきた差分は司令塔が必ず見る
この5つが揃っていれば、実装は「精密な指示を機械的に適用するだけ」になり、 低effortでも品質が落ちない。逆に一つでも欠けると、 実装層が勝手に判断し始めて事故る。effort:lowは設計が伴って初めて安全だ。
4. 削るのは実装層だけ——非対称性
ここがいちばん強調したい点だ。 コスト削減の対象は実装層に限る。司令塔と検証層は削らない。
削ってよい
- 実装層のeffort(→ low)
- 実装層のモデル(→ 下位ティア)
- 機械的な適用作業のコスト
削ってはいけない
- 司令塔の判断力(high〜xhigh維持)
- 検証層の敵対的verify
- 判断が集まる場所のコスト
判断の質は、上流と検証で決まる。 そこを安くすると全体が崩れる。 逆に、判断のない機械作業を高いモデルで回すのは、ただの浪費だ。 「一律に安く」でも「一律に高く」でもなく、判断のある層だけ厚くする—— この非対称性こそが設計の肝になる。
5. 実装と、実証
型を書くだけでなく、並列調査ワークフロー dev-agent-discovery.js にも配分を実装した。
機械的抽出を担うreaderは低effort(既定 medium、純機械的なら low)に、
判断を担うscope / synthesizeはセッションのeffortを継承する(node --check 通過)。
そして実証もある。前回の記事で書いた13項目のクリーンアップが、 まさにこの配分で回した実例だった—— 実装は下位ティア・effort:lowのエージェントに委譲し、全項目を完遂、 対象外の変更まで自発的に報告した(=成立条件5つを満たした)。 一方でverify層はhigh、propose層はxhighで運用している。
「安いモデルで雑になる」のではない。判断を上流で固め切ってから渡すから、下流は安くても崩れない。安さは設計の結果であって、妥協ではない。
6. まとめ
今回は、キットの核原則をエージェント階層のコスト設計にまで延ばした回だ。
- 判断は上流に集約し、実装層からは判断を排除する
- 司令塔・検証はセッションモデルで high〜xhigh、実装は下位ティア・effort:low
- effort:lowは5条件(自己完結・判断余地ゼロ・検証同梱・報告義務・差分レビュー)が揃って成立する
- コストを削るのは実装層だけ。判断が集まる層は削らない
「AIは判断材料、判断は人間」——このシリーズの出発点だった一文は、 スケールさせると「判断が集まる場所に資源を寄せ、機械作業は薄く速く」という コスト配分の指針にもなる。 人間の判断を守る型は、そのままAIの判断を配る型でもあった、という話だった。
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